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桜木紫乃『裸の華』と清水ひとみ [ストリップの過去や読んだもの]

女性がストリップを観るようになってきたきっかけの一つに、
桜木紫乃の影響がありそう、と思って読んでみた。
2015年に連載された作品。

怪我で舞台に立てなくなった40歳のストリッパーが、
札幌でダンス付きのバーを開店して、
若い二人の踊り子を育てる過程で自分も再生する
というお話。


題材がストリップであること以前に、
自分の年齢的に、
次の世代が幸せになることを優先する様子が、沁みた。
若い世代がうらやましくもあり、
彼らのために場所を用意できる自分が誇らしくもあり。


そもそも、ストリッパーが主人公で、ここまで内面がしっかり描かれたものって、
ほかにあるのかなあ。
ダンスですら、あまり無い気がする。

自分は習い事の範疇でしかやってないから全然わからないけど、
ダンスをする人の内面や、ダンスについてのいろいろが、
ここまで言語化されているのは、貴重なんじゃないか。
彼ら、体で語っちゃうから。


ストリップそのものについても、いい表現がたくさんあった。

「客席に散らばった羞恥心が昇華して踊り子の体に太い輪郭を与える瞬間、
舞台と客席がひとつになる。」

わかるー!


文庫本の解説や、刊行時のネットの記事によると、
清水ひとみという伝説的なストリッパーの新聞記事を読んだのが、
桜木さんがはまるきっかけで、2000年前後、
カップルはいても女性は自分ひとり、という状況だったらしい。


清水ひとみは今は行方知れずとなっているそうで、
その後は、この作品では二人のストリッパーに投影されている。

一人は、過去を捨てて、料理上手で太った専業主婦となっている。
もう一人は、温泉場の汚い小さな小屋で、老いた体で今も踊っている。
主人公は最終的には後者の道を選ぶ、ということなんだろう。


清水ひとみは1985年の風営法改正で多くの小屋がつぶれたときに、
女性でも観られるものを、という渋谷道頓堀劇場の公演で活躍した方だそうだ。
姫野カオルコの公演ルポが雑誌に載ったり、ファンがたくさんいたそうだ。
その後、劇場主にもなって、札幌道頓堀劇場の社長だったと。
(今そのネット記事が見つからん…)


あー、女性が観る歴史はそのあたりまで遡るんだ。
当時、自分は中高生だったけど、
その後、この記事で書いたアダルトビデオが人気だったり、
女性でもそういうものを観る文化がちょっとはあったような気がする。

バブルの高揚、イケイケなノリが背景にあって、
ディスコで女性が見られるために踊る、とかもその文脈だったのかもしれない。
当然、女性の社会進出とリンクしていて、
でも、今思えばそれは本当の男女平等ではなかったなあ。
性的なこともあけすけに言える女、という新しい役が広まっただけで、
その役を演じる女性が搾取されるのは変わらない。

検索したら、週刊文春1987.5.7で二人が対談してた。
読んでみたけど、男性が期待する「エロい女」という作りで、
今の目からすると、全然的外れだった。
けど、それはそれで一つの過程ではあったと。


『裸の華』で、清水ひとみをモデルとした人物について、
「ひとみさんの言葉であたしが忘れられないのは
「女が喜んで観ることができるステージを作る」だった。
あのひとはずっと信じてたんだ。
いつか女たちが堂々とストリップ劇場にやってくる日が来るって。」
というくだりがある。
これは桜木さんが清水ひとみから聞いた言葉なのだろうか。
今、けっこう、実現しつつありますよ。


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